中間言語
さまざまな国籍、国語をもつ学習者たちは、難易度の違いこそあれ、共通のプロセスで第二言語を習得していきます。「過度の一般化」と呼ばれる現象もその1つでした。この言語習得における共通のプロセスについて考えてみましょう。
英語を学習するとき、もっとも単純化された図式は下記です:
母語 → 英語
これは、母語をもちいて英語を翻訳し、学習をすすめていくなかで英語の知識やスキルをレベルアップしていく図式ですね。
このプロセスを第二言語習得においてもっと有用な形に変換するとこうなります:
「中間言語」(interlanguage)という見慣れない言葉がでてきましたね。これ、どういうことかと言いますと、言語学習者は母語をもちいて英語を学習する際に、英語とは別の独自の言語体系を構築するというモデルなのです。
簡単に言うと、中間言語=仮説段階の英語となります。間違いを多く含む英語と言ってもいいでしょう。この仮説として構築された言語体系である「中間言語」を、なるべく英語に近づけていくことで英語の習得が進むわけです。「中間言語」を構築→検証しながら英語に近づけるという流れです。
では、なぜこのようなモデルが考えられたのでしょう。
言語学習者の母語にかかわらず共通のミス「過度の一般化」等の現象がありますね。ところが、「中間言語」という概念がない場合、母語と英語が直通しているので、英語学習は完全に学習者の母語へ依存することになります。
どのように英語を学習するかは母語にあわせてまったく異なる。「過度の一般化」のような現象も体系的に捉えることができず、第二言語習得という科学的アプローチがやりにくいわけです。
そこで、どのような母語であれ、言語学習者に共通の習得プロセスを解明しようと先人たちが研究を重ねた結果、「中間言語」を挟むモデルがもっとも合理的に学習プロセスを説明できることがわかってきました。
「中間言語」がどのように構築されるのか考えていけば、母語に依存しない普遍的な学習方略(学習メソッド)を組み立てることができるのではないか、と。
個人的にも、普遍的な学習メソッドを日本人向けに調整して、日本人にとってもっとも効果的な学習メソッドをつくる方が非常に説得力がでるのではないかと考えるわけです。
説得力というのは学習モチベーションにとても影響するので、結果的に同じ学習メソッドを提案するにしても、しっかりしたモデルをベースに説明したほうが良いと思いますね。